
我が家の前の姫りんごの実も、だんだんと赤さを増してきた。
そしてこれも赤。

これは、暖房と温水用のボイラーで、一階のガレージで音を立てて頑張ってくれています。
この奥の地下室には大きな灯油用のタンクがあって、そこからボイラーに灯油が移動し、ボイラーから温水が蛇口へ、温水暖房が各部屋へと移動していきます。
この秋は、9月27日に暖房のスイッチを入れました。
おととしは、10月の6日。
去年は、10月中南仏にいたので、暖房を使い始めたのは11月でした。
今年は一気に秋が過ぎて、もう冬がやってきたようです。
それから、これは愛のりんご!?
白血球が減るのは、抗がん剤のせいで、それははっきりしていることだし、最初からそういうことが予想されているので、必ず前日に血液検査を行うのだけど…
一生懸命病気と闘い、痛くても辛くても、歩く努力をしたり、たくさん食べようと努力しているツバメの王子本人は、まるで自分の努力が報われなかったように、このことで数日間落ち込んでしまった。
りんご姫はりんご姫で、免疫力が落ちているツバメの王子が7月の終わりの時のように、高熱を出したり、喉に菌がついたりすることがないようにと…しょっちゅうおでこを触ったりと、気がきではなかった。
かかり付けのドクター・ステファンの所へ行って、ツバメの王子は「どうしたら白血球が増えるのか?何を食べたらいいのか?」と質問した。
りんご姫は、抗がん剤のせいだから時間が経つのを待つしかないとわかっていたけど、本人が納得できるようにと一緒にドクターの所へ行った。
「薬で増やすこともできるけど、それは人工的に一時的に増やすだけだから、更に危険が増すので、時間が経つのを待ちましょう。」と、ドクターは丁寧に説明してくれた。
ツバメの王子があまりに心配そうな顔をしているので、ドクターは「そんなに心配だったら、いつでも会いに家まで行ってあげますよ。」と声をかけてくれた。
いい先生である。
「あー、それはいいですね。ぜひ飲みに来てくださいね!」
急に元気の出たツバメの王子は、やっぱりどこまでもおちゃらけている。
しばらくお天気がよくなかったのだが、2日のマレのお祭りの日には最高の天気になり、その後、応援団長カップルが我が家に滞在してくれて、ツバメの王子はまた元気を取り戻し、9月4日には、前日の血液検査で白血球の数が基準に達していたので、いつもどおり抗がん剤を投与してもらうことができた。
「抗がん剤をきちんと投与してもらうことを自分から希望する患者はそう多くないよ」なんて言っている。
病院で担当のドクターに「CTスキャンの検査の結果で、肺の癌は半分になったことがわかりましたよ。肝臓の方は、測るのが難しいのでなんとも言えないけれどね。」と言われて、大喜びのツバメの王子は、やる気も食欲も増している。
でも、実際のツバメの王子の癌は、よくなっていない。
ドクターが私だけに電話で教えてくれた。
それでも、それでも、ツバメの王子が喜んでいるのを見ると、やっぱり嬉しくなって、毎朝食べるフルーツタルトに、さらにいろんな果物をのっけたくなるりんご姫である。
散歩をしてる間に、木々を見上げると、葉の間からは美しい光がたっぷりと溢れていて、カテドラルの中に注ぐ光も優しく溢れている。
そんな光に向かって「なんとか、なんとか…なんとかしてね。なんとかなるよね。」と繰り返す毎日だ。










でも、祭りといっても、日本のお祭りのように山車や神輿が出て、胸がわくわく血が騒ぐっていうような、江戸っ子の私がはしゃいじゃうような祭りじゃなくて、ちょっとした催し物があって、みんなにマレの自然を紹介するといったものだ。
それでも、ツバメの王子とりんご姫は、前日から屋台のピリリと辛いメルゲーズソーセージを食べるのを楽しみにしていて、当日の朝にはとってもいいお天気になったので、車椅子と一緒に、ワクワクしながらお昼前に出かけた。
姫りんご通りからマレへの小道に入って、ヴォワゼル川の小さな流れの横を歩いて着いたフレーヌ広場では、色とりどりの野菜を売っていたり、ミニチュアの船を展示しているグループは実際にその船を川に浮かせてリモコンで操作してみせてたり…久しぶりにたくさんの人の中にいる二人であった。



それから、土手の上はツバメの王子が座った車椅子をりんご姫が押しながら散歩した。
左手には、「下のマレ」の畑が広がっている。

川のある土手より右手の方が、土地が高くなっているのでこの右側が「上のマレ」と呼ばれていて、それぞれの畑は島になっている。
その「上のマレ」より土地が低いので左手の方が「下のマレ」って呼ばれている。
単純な呼び名だ。

私たちの「渡し」が繋がれているエシャロット港には、舞台が組み立てられて、テントも張られ、いつもとは全く違う雰囲気だ。
メルゲーズのソーセージを3本も食べたツバメの王子は、おちゃらけ家族たちにそのことを電話で報告する。
メルゲーズを食べてる姿は携帯で写真を撮って、電話をしてる姿はデジカメで撮って…と、りんご姫は、そんなことにてんてこ舞いでメルゲーズは一本しか食べなかった~。

いつもよりもたくさんの人がマレに集まり、川の反対側へ移動する大型「渡し」も活躍してる。
夏のように暑くなった日差しに、このお祭りを主催しているアソシアシオンの会長さんがツバメの王子に帽子をプレゼントしてくれた。
我が町のある県のロゴの入った単純な帽子なんだけど、プレゼントされたのが嬉しくて、この日以来出かけるときは、必ずこの帽子を持って外出するツバメの王子であった。

フェンシングのデモンストレーションは、舞台と、船の上とで行われ、ツバメの王子は特等席でその様子を見つめる。





警察官も一緒に特等席?!

花やいろんな飾りをつけた「渡し」の川での行進もあった。




家に戻ったら夕方6時になっていた。
こんなに長い時間、二人で外にいられるなんて、3ヶ月ぶりかな。

「あー、いい一日だね~」
「なんで、僕は半分しか写ってないの?」
いつものマレの自然の風景も、秋の青空の下でさらに美しく見えたほんとうにいい一日だった。

