秋の赤
2007年 09月 20日
「その声を残さず鷹の渡るなり」
「漉きし和紙干すコスモスの日差す中」
日本では今日はお彼岸の入りなんですね。
同じ秋でも日本とフランスとでは、やっぱり少し空気の感じが違うものです。
日本にいた頃もそうだったのかもしれないけれど、どの季節も好きながら、フランスに来てからは、特に実りの秋がいちばん好きになった気がします。
父の俳句にも気分的に助けられることもあるけれど、「詩」や「言葉」に助けられることも多い。
“小さな娘”の頃に読んだ「小さな娘が思ったこと」。
りんご姫は母親にはなれなかったけど、
「ひとの奥さんの肩にふりつもる あのやさしいもの」が
「日々 ひとを愛していくための ただの疲労であった」
ということが、今よく理解できる。
りんご姫の肩にも
「木犀みたいに
くちなしみたいに」
淡い香りが漂っているのなら
それだけでも
幸せだ。
大人になっても
どぎまぎしながら
じたばたしながら
生きていくこと
それでいいのだと
茨木のり子さんは
ずいぶん前から
教えてくれていたんだな。
茨木のり子さんの詩など
昨年だったか、新聞のニュースで彼女が、日本のりんご姫の実家よりそう遠くない所に住んでいて、その自宅でひっそりと一人で亡くなっていたという記事を読んだ。
人生に起こったことをきちんと受け入れながら亡くなったのか、最期までじたばたされたのか。
彼女のことは、なんだか「先輩」と呼びたい気分だ。